現代ニホンガのレゾンデートル
週末にどうしても行きたかった日本画を観てきました。
場所は岐阜市にある老舗料亭「後楽荘」。
明治時代後期からの建物は岐阜の街の中にひっそりと存在し、
中に入るとまるで別世界のように優雅な古い日本家屋、日本庭園を楽しめる風情溢れる料亭です。
そんな建物の中での日本画の展覧会です。
美術館とは一味も二味も違う味わい深い展覧会でした。
玄関を入ったところから横に長い紙にはみ出す迫力の龍が迎えてくれます。
作者は長谷川喜久さん。社長と同じ❝よしひさ❞さんです。
岐阜市出身の有名な日本画の先生です。
長谷川先生の作品はこの後楽荘を龍の巣に見立てて
あらゆるところに龍が出現する形になっています。
龍の表情や、ひげ、鱗など顔料の濃淡で色が重なり
まるで生きているかのような動きを感じます。
廊下の壁には「龍の巣へようこそ」と順路を案内する小さな龍の表示が
一つ一つ墨で描かれていて
小さな龍たちになんだか愛着がわいてきます。
段ボールに描いた墨の龍もあったり
大きな掛け軸のものもあり、素晴らしい展示でした。
迫力ある龍の絵の合間合間には
お茶席の水屋にさりげなくヤモリの絵があったり
トカゲの絵があったり
料亭の行燈に描かれた蜘蛛や蝶々などの絵は神戸智行さんの作品。
ほっと気持ちが穏やかになります。
まだまだ紹介しきれないほどたくさんの作品が展示してありました。
料亭のたたずまいと作品の雰囲気がマッチして作品を何倍も味わい深く楽しめた気がします。
巨匠の方々の絵がこんな風にそばで拝見できて、写真も撮影OKでした。
いつも美術館で見ているガラスの中の日本画は敷居の高いものに感じられますが
今回のような展示だと遊び心も感じられ、
私は龍の巣で龍とかくれんぼうでもしているかのような不思議な気持ちになりました。
現代ニホンガのレゾンデートル(存在意義)というタイトルでしたが、
伝統と革新に踏み込んだ今回の展示は充分に価値があったのではないでしょうか。
これからの日本画にも注目していきたいです。